省令準耐火は本当に必要?
省令準耐火構造とは?火災保険ともらい火への備えを解説
注文住宅の打ち合わせで、「省令準耐火」という言葉を聞くことがあります。
省令準耐火を採用すると火災保険料が安くなる場合があるため、保険料を抑えるための仕様だと思われることも少なくありません。
確かに、火災保険料の負担を抑えられる可能性は、省令準耐火のメリットのひとつです。
しかし、本来の目的は保険料を安くすることだけではありません。
外からの火が家へ燃え移りにくくすること。
室内で発生した火災を、その部屋の中にできるだけとどめること。
壁や天井の内部を通って、別の部屋へ火が広がる時間を遅らせること。
こうした建物自体の防火性能を高めることが、省令準耐火の大きな役割です。
省令準耐火は、保険料のための仕様ではなく、火災時に家族が避難する時間と、住まいを守れる可能性を高めるための選択肢です。
今回は、省令準耐火構造の意味や特徴、火災保険料との関係、隣家からのもらい火に対する日本のルールについて、家づくり初心者の方にも分かりやすく解説します。
省令準耐火構造とは?
省令準耐火構造とは、建築基準法で定められる準耐火構造に準ずる防火性能を持つ構造として、住宅金融支援機構が定める基準に適合する住宅をいいます。
住宅金融支援機構は、省令準耐火構造の主な特徴として、次の3点を挙げています。
- 外部からの延焼防止
- 各室防火
- 他室への延焼遅延
外部からの延焼防止とは、隣家などで発生した火災が、自宅へ燃え移りにくくする考え方です。
各室防火とは、室内で火災が発生した場合に、壁や天井を燃え抜けにくくし、できるだけその部屋の中に火をとどめる考え方です。
他室への延焼遅延とは、壁や天井の内部を通って火が別の部屋へ広がることを遅らせる考え方です。
「絶対に燃えない家」になるわけではありません。
火災時の燃え広がりを抑え、避難や消火のための時間を確保しやすくする構造と考えると分かりやすいでしょう。
省令準耐火では何が変わる?
一般的な木造住宅を省令準耐火仕様にする場合、壁や天井、下地材、部材の接合部分などを、定められた基準に合わせて施工します。
たとえば、室内側の壁や天井に使用するせっこうボードの種類や厚み、張り方、留め付け方法などに細かなルールがあります。
壁と天井の取り合い、柱や梁の周囲、設備配管が貫通する部分なども、火が壁の内部へ入り込みにくいように処理する必要があります。
単純に下地材を一枚追加すれば完成するものではありません。
設計段階で省令準耐火仕様にすることを決め、図面や仕様を整え、現場で基準どおりに施工することが重要です。
住宅金融支援機構が定める仕様に基づく住宅や、機構から承認を受けた住宅・工法などが省令準耐火構造の対象になります。
省令準耐火は、材料の名前だけではなく、壁や天井を含む建物全体の施工方法によって成立する性能です。
外からのもらい火を防ぎやすくする
火災は、自宅の中から発生するとは限りません。
隣家や近隣の建物で発生した火災が、炎や熱、火の粉によって自宅へ燃え移る可能性もあります。
特に住宅が密集した地域では、一軒の火災が周囲へ広がるリスクを考えなければなりません。
省令準耐火構造では、屋根、軒裏、外壁、開口部などについて、外からの火を受けても燃え広がりにくい仕様を採用します。
ただし、窓や玄関ドアなどの開口部があるため、延焼を完全に防げるわけではありません。
敷地条件や隣家との距離、窓の位置、外壁や屋根の仕様も含めて考える必要があります。
それでも、建物の防火性能を高めることは、隣家からのもらい火による被害を抑えるための備えになります。
室内の火を広げにくくする
室内で火災が発生した場合、省令準耐火構造は、火が壁や天井を燃え抜けてほかの空間へ広がる時間を遅らせることを目指します。
たとえば、キッチンや暖房器具、電気設備などが原因で一室から火が出た場合、その火をできるだけ発生した部屋の中へとどめます。
火災がほかの部屋へ広がるまでの時間を少しでも延ばせれば、家族が避難したり、消防へ通報したりする時間につながります。
また、壁や天井の内部には、柱や梁、断熱材、電気配線などがあります。
火が壁の内部へ入ると、見えない場所を通って別の部屋や上階へ広がる可能性があります。
省令準耐火では、壁や天井内部の防火上重要な部分にも処理を行い、火の通り道をつくらないように施工します。
火災保険料が安くなる可能性がある
火災保険の保険料は、建物の所在地、床面積、建築金額、補償範囲だけでなく、建物の構造によっても変わります。
建物の燃えやすさや損害の広がりやすさなどに応じて、「構造級別」という区分が設定されています。
一般的な木造の戸建住宅と、省令準耐火建物では、異なる構造級別として扱われる場合があります。
日本損害保険協会の案内では、省令準耐火建物は、住宅金融支援機構が定める仕様に合致する建物、または同機構の承認を得た建物と説明されています。
省令準耐火建物であることは、設計仕様書や施工者、メーカーによる証明書類などで確認します。
防火性能の高い構造として判定されれば、一般的な木造住宅より火災保険料を抑えられる可能性があります。
ただし、具体的にいくら安くなるかは一律ではありません。
保険会社、商品、建築地、補償内容、保険金額、契約期間などによって異なります。
省令準耐火へ変更するための追加費用と、長期間で軽減できる保険料を比較して判断することが大切です。
火災保険を安くすることだけが目的ではない
火災保険料が安くなるのであれば、それだけでも省令準耐火を検討する理由になります。
しかし、KIKIでは保険料だけを目的に採用するものではないと考えています。
火災保険は、火災が起きた後の経済的な損害に備えるものです。
一方、省令準耐火は、火災が起きたときに、建物の被害が広がる速度を抑えるためのものです。
役割が異なるため、どちらか一方だけで十分とはいえません。
火災保険は事故後の暮らしを守り、省令準耐火は事故中の家族と建物を守るための備えです。
実際に火災が発生したときは、保険料をいくら節約できたかよりも、家族が安全に避難できたか、被害をどこまで抑えられたかが重要になります。
隣家からのもらい火は誰が補償する?
日本には「失火責任法」という法律があります。
この法律により、火災を起こした人に重大な過失がない場合、隣家へ燃え移って損害を与えても、原則として不法行為による損害賠償責任を負いません。
反対の立場で考えると、隣家からのもらい火で自宅が焼けた場合でも、火元に重大な過失がなければ、火元の住人へ損害賠償を求められないことになります。
「隣の家が原因なら、隣の人が建て直してくれる」
と考えている方もいるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。
基本的には、自分が加入している火災保険を使って、自宅の修理や再建を行うことになります。
もちろん、故意や重大な過失がある場合など、状況によって責任関係は異なります。
しかし、通常の失火では、火元へ請求できない可能性があることを理解しておく必要があります。
自分が注意するだけでは火災を防ぎきれない
日頃から火の元を確認することは非常に重要です。
コンロの使用後に確認する。
暖房器具の周囲へ燃えやすいものを置かない。
古い電気コードやコンセントを点検する。
こうした対策によって、自宅から火災が発生するリスクを減らせます。
しかし、自分がどれだけ注意していても、隣家や近隣施設からの火災までは防げません。
落雷や電気設備の故障、放火など、自分では管理できない原因もあります。
そのため、火災への備えは「火を出さない」だけでは不十分です。
- 火を出さないための生活上の注意
- 火災警報器などによる早期発見
- 火災保険による経済的な備え
- 省令準耐火など建物自体の防火性能
これらを組み合わせることが大切です。
火災対策は、自宅から火を出さないためだけでなく、外から火を受けたときのことまで考える必要があります。
省令準耐火を採用する際の注意点
省令準耐火には多くのメリットがありますが、すべての家で無条件に採用すればよいわけではありません。
まず、一般的な仕様と比べて、下地材や施工工程が増えるため、建築費が上がる場合があります。
壁や天井の納まりに一定のルールがあるため、梁を見せるデザインや木を現しにする内装など、希望するデザインとの調整が必要になることもあります。
照明、コンセント、換気設備などの貫通部分も、基準に合わせて施工しなければなりません。
また、設計仕様書や施工証明など、省令準耐火建物であることを保険会社へ示すための書類も重要です。
採用を検討する際は、次の点を建築会社へ確認しましょう。
- 追加費用はいくらか
- 火災保険料がどの程度変わるか
- 内装デザインに制約があるか
- どの部分の仕様が変わるか
- 省令準耐火を証明する書類が発行されるか
- 保険会社へ提出する書類は何か
追加費用だけでなく、長期間の保険料、家族の安心、設計への影響まで含めて検討する必要があります。
KIKIで採用する方が約2割の理由
KIKIでは、すべてのお施主様へ一律に省令準耐火を採用していただくのではなく、ご希望や建築条件、予算に合わせて相談しています。
そのため、採用される方は全体の2割ほどです。
火災保険料を抑えたい方。
隣家との距離が近く、もらい火が心配な方。
建物自体の防火性能を高めたい方。
長期間の安心を重視したい方。
こうしたご家族にとって、省令準耐火は検討する価値のある仕様です。
一方で、追加費用やデザイン上の希望を優先し、採用しない選択もあります。
重要なのは、保険料が安くなるという一点だけで決めることではありません。
どのようなリスクへ備えたいのか、追加費用に対してどのような価値が得られるのかを理解したうえで選ぶことです。
火災保険の補償内容も確認する
省令準耐火にして火災保険料が抑えられても、必要な補償が不足していては十分な備えになりません。
火災保険を検討するときは、火災だけでなく、風災、水災、落雷、破裂・爆発など、どのような事故が補償されるかを確認しましょう。
建物と家財は、別々に保険金額を設定するのが一般的です。
建物の保険へ加入していても、家具や家電などの家財が自動的に補償されるとは限りません。
また、地震、噴火、津波を原因とする火災や損壊は、一般的な火災保険だけでは補償されないため、地震保険を検討する必要があります。
省令準耐火は建物の防火性能を高めるものですが、保険の代わりになるものではありません。
建物の性能と保険の補償内容をセットで考えましょう。
まとめ
省令準耐火構造とは、建築基準法上の準耐火構造に準ずる防火性能を持ち、住宅金融支援機構の基準に適合する住宅です。
主な特徴は、外部からの延焼防止、各室防火、他室への延焼遅延です。
省令準耐火建物は、一般的な木造住宅とは異なる構造級別で扱われる場合があり、火災保険料を抑えられる可能性があります。
しかし、保険料を安くすることだけが目的ではありません。
火災が起きたときに燃え広がる時間を遅らせ、家族が避難しやすくし、建物への被害を抑えることが本来の価値です。
また、日本では、隣家からのもらい火で自宅が焼けても、火元に重大な過失がなければ、原則として損害賠償を請求できません。
そのため、自分の火災保険で備えると同時に、建物自体を燃え広がりにくくすることにも意味があります。
自分が火事を起こさないように注意するだけでは、近隣からのもらい火までは防げません。
KIKIでは、省令準耐火をすべての方へ一律におすすめするのではなく、建築地、予算、デザイン、保険料、ご家族の安心への考え方を伺いながら検討します。
火災保険の安さだけでなく、万一のときに家族と住まいを守れる可能性を高める。その視点で省令準耐火を考えることが、後悔しない家づくりにつながります。