24時間換気が生まれた背景
24時間換気はなぜ必要?シックハウス対策と3つの換気方式を解説
注文住宅の打ち合わせでは、間取りや家事動線、断熱材、窓など、目に見えやすい部分へ関心が集まりやすくなります。
一方で、住み始めてからの空気環境に深く関係するのが「換気」です。
現在の住宅には、一般的に24時間換気システムが設置されています。
しかし、
「窓を開ければ十分ではないの?」
「換気扇をずっと動かす必要があるの?」
「第1種換気と第3種換気は何が違うの?」
と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
24時間換気が求められるようになった背景には、住宅の気密性向上と、建材などから放散される化学物質によるシックハウス問題があります。
気密性を高めて冷暖房効率を向上させるだけではなく、新鮮な空気を計画的に取り入れ、汚れた空気を外へ出す仕組みまで整えることが、快適な家づくりには欠かせません。
今回は、24時間換気が必要になった背景や「2時間に1回」の意味、第1種・第2種・第3種換気の違いについて、家づくり初心者の方にもわかりやすく解説します。
住宅の気密性が高まると換気が重要になる
昔の住宅は、現在と比べると建物に隙間が多く、窓を閉めていても外の空気が自然に出入りしやすい状態でした。
そのため、意図していなくても一定量の空気が入れ替わっていました。
一方、現在の注文住宅では、断熱性能や冷暖房効率を高めるため、建物の隙間を少なくする気密施工が重視されています。
気密性が高まると、冷暖房した空気が外へ逃げにくくなり、室内温度を保ちやすくなります。
外気が無計画に入りにくくなるため、室内の快適性や省エネ性にもつながります。
ただし、気密性が高い住宅では、窓や給気口を通さない限り、自然に空気が入れ替わりにくくなります。
料理や入浴、人の呼吸などによって発生する湿気、におい、二酸化炭素などが室内にとどまる可能性があります。
そのため、高気密な住宅ほど、必要な場所から空気を取り入れ、決められた経路で排出する「計画換気」が大切になります。
高気密住宅は換気をしなくてもよい家ではなく、計画どおりに換気しやすい家です。
シックハウス問題とは
住宅の換気制度を理解するうえで知っておきたいのが、シックハウス問題です。
住宅には、合板、壁紙、塗料、接着剤、家具など、さまざまな材料が使われています。
過去には、建材や内装材などから放散されるホルムアルデヒドや揮発性有機化合物によって、目、鼻、のどへの刺激、頭痛などの症状が生じる問題が注目されました。
こうした問題は、一般的にシックハウス症候群と呼ばれています。
ただし、シックハウスに関係するとされる要因は一つではありません。
建材などから放散される化学物質のほか、カビ、ダニ、湿気、換気不足、温熱環境など、さまざまな要素が関係する可能性があります。
そのため、特定の建材だけを避ければよいという単純な問題ではありません。
放散量の少ない建材を選ぶことに加え、適切に換気を行い、室内の空気を外へ排出することが重要です。
2003年に強化された建築基準法のシックハウス対策
シックハウス問題への対策として、建築基準法に基づく規制が設けられました。
国土交通省によると、シックハウス対策に関する規制は、2003年7月1日以降に着工された建物に適用されています。
主な対策には、ホルムアルデヒドを放散する建材の使用制限、クロルピリホスを添加した建材の使用禁止、機械換気設備の設置などがあります。
住宅の場合は、原則として1時間当たり0.5回以上の換気能力を持つ機械換気設備、いわゆる24時間換気システムの設置が必要です。
現在では、ホルムアルデヒドの発散量が少ない建材が広く使われています。
しかし、使用する建材の性能が高くなったからといって、換気が不要になったわけではありません。
人の呼吸による二酸化炭素、料理や入浴による湿気、生活のにおいなどを外へ排出するためにも、換気は必要です。
「2時間で1回、空気が入れ替わる」の意味
24時間換気について説明するときに、
「2時間で1回、家の空気が入れ替わります」
と表現することがあります。
これは、住宅で原則として求められる換気回数が、1時間当たり0.5回以上であることをわかりやすくした言い方です。
1時間で住宅の空気量の半分に相当する量を換気するため、計算上は2時間で住宅の空気量と同じ量になります。
ただし、2時間たった瞬間に、室内の古い空気がすべて新しい空気へ一斉に入れ替わるわけではありません。
実際には、給気口などから外の空気が少しずつ入り、排気口から室内の空気が少しずつ出ていきます。
新しい空気と室内の空気は混ざり合いながら移動します。
また、部屋の形や間取り、給気口と排気口の位置、室内ドアの開閉状態、設備のメンテナンス状況などによって、空気の流れは変わります。
大切なのは換気設備の数字だけではなく、家全体に換気経路がつくられていることです。
第1種換気とは
第1種換気は、給気と排気の両方を機械で行う方式です。
外の空気を機械で取り入れ、室内の空気も機械で排出します。
給気量と排気量を機械で調整しやすく、計画的な空気の流れをつくりやすいことが特徴です。
また、第1種換気には、排出する空気の熱を利用して、取り入れる外気の温度を室温へ近づける「熱交換型」の設備もあります。
冬の冷たい外気や夏の暑い外気が、そのまま室内へ入ることをやわらげられるため、冷暖房効率を重視する高断熱・高気密住宅で採用されることがあります。
一方で、設備本体やダクトなどの初期費用が必要です。
フィルターの清掃や交換、設備によってはダクトを含めた維持管理も考えなければなりません。
高性能な換気設備でも、メンテナンスを行わなければ、設計どおりの風量を保ちにくくなる可能性があります。
第2種換気とは
第2種換気は、給気を機械で行い、排気を自然に行う方式です。
換気設備は、給気と排気の組み合わせによって第1種・第2種・第3種に分類されます。
機械で外の空気を押し込むため、室内の気圧が外より高くなる「正圧」の状態をつくりやすいことが特徴です。
扉を開けたときなどに外部の空気が入り込みにくいため、清潔さを保ちたい施設などで利用される場合があります。
一方、一般的な住宅で第2種換気が採用されるケースは多くありません。
寒い地域では、湿気を含んだ室内の空気が壁の中へ押し出されることによる結露リスクなども考慮する必要があります。
住宅で採用する場合は、気候や壁の構成を含めた専門的な設計が重要です。
第3種換気とは
第3種換気は、給気を自然に行い、排気を機械で行う方式です。
外壁などに設けた給気口から外気を取り入れ、トイレ、洗面室、廊下などの排気口から機械で空気を外へ出します。
比較的シンプルな仕組みで、初期費用を抑えやすいことから、住宅で広く採用されています。
一方で、冬は冷たい外気が給気口から直接入るため、給気口の位置によっては寒さを感じる場合があります。
また、給気口のフィルターが汚れたり、寒いからと給気口を閉じたりすると、計画どおりに空気が流れなくなります。
第3種換気を採用する場合は、給気口の位置、排気口までの空気の通り道、住宅の気密性能を合わせて考えることが重要です。
どの換気方式が一番よいのか
第1種・第2種・第3種のうち、どの方式が一番優れているかを一律に決めることはできません。
第1種換気には、熱交換による冷暖房効率のメリットがあります。
第3種換気には、仕組みが比較的シンプルで、導入費用を抑えやすいメリットがあります。
第2種換気にも、室内を正圧に保ちやすいという特徴があります。
ただし、住宅の地域、間取り、断熱・気密性能、設備費用、電気代、メンテナンス方法などによって、適した方式は変わります。
設備本体の性能だけを比較するのではなく、
- 必要な換気量を確保できるか
- 各部屋に空気が流れるか
- 清掃やフィルター交換を続けられるか
- 冷暖房計画と合っているか
- 運転音が生活の負担にならないか
などを確認することが大切です。
換気方式の名称よりも、その家で計画どおりに空気が流れ、住む人が無理なく管理できることが重要です。
換気設備は基本的に連続運転する
24時間換気システムは、その名前のとおり、基本的には継続して運転することを前提に設計されています。
寒さや運転音、電気代が気になるからと停止すると、室内の湿気やにおいなどを計画どおりに排出できなくなります。
特に新築直後は、建材だけでなく、家具などからも化学物質が放散する可能性があります。
また、日常生活では、料理、入浴、洗濯物の室内干し、人の呼吸などによって湿気が発生します。
換気設備を使用していても、フィルターや給気口にほこりがたまると風量が低下する場合があります。
定期的にフィルターを掃除し、給気口を家具やカーテンでふさがないことが大切です。
キッチンや浴室などで大量のにおいや湿気が発生したときは、24時間換気に加えて、局所換気扇や窓開けを併用する方法もあります。
断熱・気密・換気は3つセットで考える
快適な注文住宅をつくるためには、断熱・気密・換気を別々に考えないことが重要です。
断熱は、熱を伝わりにくくすること。
気密は、建物の隙間を少なくすること。
換気は、必要な量の空気を計画的に入れ替えることです。
断熱性能が高くても、隙間が多ければ冷暖房した空気が逃げやすくなります。
気密性能だけを高めても、換気計画が不十分であれば、湿気やにおいがとどまりやすくなります。
高性能な換気設備を設置しても、建物に多くの隙間があれば、計画した給気口以外から空気が入り、家全体の空気の流れを制御しにくくなります。
断熱・気密・換気の3つがバランスよく設計・施工されて、初めて快適な室内環境につながります。
まとめ
住宅の24時間換気は、気密性が高まった住宅の空気環境を守り、シックハウス対策を行うために設置される設備です。
建築基準法では、住宅の場合、原則として1時間当たり0.5回以上の換気能力を持つ機械換気設備が求められています。
これは、計算上は約2時間で住宅の空気量に相当する量を換気するという意味です。
換気方式には、給気と排気を機械で行う第1種、給気を機械で行う第2種、排気を機械で行う第3種があります。
それぞれに特徴があり、すべての住宅に共通する一つの正解があるわけではありません。
大切なのは、換気設備の種類だけで判断せず、断熱・気密・間取り・メンテナンスまで含めて考えることです。
KIKIでは、設備を付けて終わりではなく、実際の暮らしの中で空気がどのように流れるのかまで考えて家づくりを行います。
室温だけでなく、空気も心地よい住まいを目指すことが、長く快適に暮らせる注文住宅につながります。