冷房した空気を捨てない換気

 

熱交換換気とは?第1種換気の仕組みとメリット・注意点を解説

 

注文住宅の換気システムを調べていると、「熱交換換気」という言葉を目にすることがあります。

熱交換と聞くと、機械の中で何か特別なエネルギーをつくっているように感じるかもしれません。

実際には、室内から外へ捨てる空気が持っている熱を利用し、外から取り入れる空気の温度を室温へ近づける仕組みです。

住宅では、原則として1時間当たり0.5回以上の換気能力を持つ機械換気設備が必要とされています。

これは、計算上、約2時間で住宅内の空気量に相当する量を換気する考え方です。

換気をすると、室内の空気だけでなく、冷暖房によって整えた熱も外へ出ていきます。

そこで、排気する空気の熱をそのまま捨てず、給気する外気へ受け渡すために使われるのが熱交換換気です。

熱交換換気は、換気を止めずに室内の空気環境を保ちながら、冷暖房による熱の損失をやわらげるための技術です。

今回は、熱交換換気の基本的な仕組みや、第1種換気との関係、メリットと注意点、ダクト式とダクトレス式の違いについて解説します。

 

熱交換換気は主に第1種換気で使われる

 

住宅の換気方式は、給気と排気の方法によって第1種・第2種・第3種に分けられます。

  • 第1種換気は、給気と排気の両方を機械で行う方式です。
  • 第2種換気は、給気を機械、排気を自然に行います。
  • 第3種換気は、給気を自然給気口から行い、排気を換気扇で行います。

熱交換を行うためには、室内から出る空気と外から入る空気の両方を、熱交換器の中へ通す必要があります。

そのため、住宅では一般的に、給気と排気の両方を機械で管理する第1種換気と組み合わせます。

国土交通省の省エネ技術資料でも、第1種換気は給気と排気の両方を機械で行い、熱交換器を利用できる換気方式として整理されています。

ただし、第1種換気であれば、すべて熱交換型というわけではありません。

熱交換器を持たず、機械で給気と排気だけを行う第1種換気もあります。

設備を比較するときは、「第1種換気かどうか」だけでなく、「熱交換機能が付いているか」まで確認する必要があります。

 

夏の熱交換換気の仕組み

 

たとえば、夏の外気温が30℃を超えていて、室内をエアコンで25℃に冷房しているとします。

熱交換をしない換気方式では、室内の25℃前後の空気を外へ排出しながら、30℃を超える外気を取り入れることになります。

換気は室内の空気環境を保つために必要ですが、外気がそのまま入ると、エアコンは入ってきた暑い空気を再び冷やさなければなりません。

熱交換換気では、室内から排出する涼しい空気と、外から入る暑い空気を熱交換器の中で通過させます。

2つの空気そのものを混ぜるのではなく、熱交換器を介して熱を移動させます。

その結果、外の暑い空気を室温に近づけてから、室内へ取り入れられます。

たとえば外気が32℃、室内が25℃であっても、給気される空気がそのまま32℃になるのではなく、設備の性能や運転条件に応じて温度差を小さくできます。

ただし、25℃の空気として入ってくるとは限りません。

熱交換率が100%ではないことに加え、風量、室内外の温度差、設備の状態などによって給気温度は変わります。

熱交換換気はエアコンの代わりではなく、換気によって増える冷暖房負荷をやわらげる設備です。

 

冬は室内の暖かさを再利用する

 

冬は、夏と反対の働きをします。

たとえば、外気が5℃、暖房した室内が20℃の場合、熱交換をしない換気では、20℃の室内空気を排出し、5℃の外気をそのまま取り入れることになります。

熱交換換気では、外へ出す暖かい空気が持つ熱を利用し、外から入る冷たい空気を暖めてから室内へ送ります。

これにより、冷たい外気がそのまま室内へ入る場合と比べて、給気口付近の寒さをやわらげやすくなります。

エアコンや暖房設備が、外気を室温まで暖めるために必要な負担も抑えやすくなります。

高断熱・高気密住宅では、建物から逃げる熱が少ないため、換気によって失われる熱の割合が相対的に大きくなる場合があります。

そのため、熱交換換気との相性を検討する価値があります。

一方で、住宅の断熱・気密性能が十分でなければ、窓や壁、建物の隙間からも多くの熱が逃げます。

換気設備だけを高性能にしても、家全体の省エネ性が大きく改善するとは限りません。

断熱、気密、窓、冷暖房設備と合わせて考えることが重要です。

 

熱交換率とは

 

熱交換換気を比較するときに、「熱交換率」や「温度交換効率」という数字が使われます。

これは、排気する室内空気が持っている熱を、どの程度給気へ受け渡せるかを示す目安です。

一般的には、数字が高いほど、外気を室温へ近づけやすくなります。

ただし、カタログ上の熱交換率だけで、実際の省エネ性能を判断することはできません。

設備の性能は、風量、外気温、室内温度、フィルターの汚れ、ダクトの抵抗、施工状態などによって変わります。

また、温度だけを交換する「顕熱交換型」と、温度に加えて湿度の一部も交換する「全熱交換型」があります。

国土交通省の資料でも、熱交換換気設備について温度交換効率などの性能基準が設定されており、設備ごとに性能が異なることが分かります。

熱交換率が高いという数字だけで選ばず、必要な換気量を確保した状態での性能や、地域の気候との相性を確認しましょう。

 

熱交換換気のメリット

 

熱交換換気の大きなメリットは、換気による冷暖房の負担をやわらげられることです。

夏は暑い外気を少し冷ましてから取り入れ、冬は冷たい外気を少し暖めてから取り入れます。

そのため、熱交換をしない換気と比べて、室内温度が変化しにくくなります。

給気口から入る空気と室温の差が小さくなれば、冷気や熱気を直接感じにくくなり、住み心地の向上にもつながります。

また、給気と排気の両方を機械で行うため、設備が適切に設計・施工されていれば、空気の出入りを管理しやすい点も特徴です。

ただし、熱交換換気を採用すれば、必ず電気代が安くなるとは限りません。

冷暖房エネルギーを減らせる可能性がある一方で、換気設備自体を動かすための電気が必要だからです。

住宅の規模や気候、断熱性能、設備の消費電力、暮らし方などを含めて判断する必要があります。

 

第1種換気は設備費と電気代も考える

 

第1種換気は、給気側と排気側の両方にファンを使います。

さらに、熱交換型の場合は熱交換器やフィルターなども必要です。

そのため、自然給気と機械排気を組み合わせる第3種換気と比べると、設備構成が複雑になりやすく、初期費用も高くなる傾向があります。

国土交通省の住宅向け省エネ技術資料でも、一般的な比較として、第1種換気は第2種・第3種換気より設備費用やメンテナンス費用が高くなりやすいと整理されています。

また、給気と排気のファンを24時間動かすため、その分の電気代がかかります。

製品によってファンの消費電力は異なるため、「第1種換気はすべて電気代が高い」と一律には判断できません。

熱交換による冷暖房負荷の削減と、換気設備を動かす電力を合わせて考えることが大切です。

将来的には、ファンや熱交換器、制御部品などの修理・交換が必要になる可能性もあります。

初期費用だけでなく、10年後、20年後の維持管理まで確認しておきましょう。

 

第3種換気との違い

 

一般住宅でよく使われる第3種換気は、外壁などに設けた自然給気口から外気を取り入れ、トイレや洗面室などの換気扇から排出する方式です。

排気側だけを機械で動かすため、設備の仕組みが比較的シンプルです。

初期費用や部品交換の負担を抑えやすい一方で、基本的には外気がそのまま室内へ入ります。

冬は給気口付近で冷気を感じたり、夏は暑い空気が入ったりすることがあります。

第1種熱交換換気と第3種換気のどちらがよいかは、単純には決められません。

第1種は熱交換による快適性や省エネ性を期待できますが、設備費やメンテナンスが増えます。

第3種はシンプルで維持しやすい一方、外気温の影響を受けやすくなります。

どちらを選ぶかは、設備の性能だけでなく、家族が費用・快適性・管理のしやすさのどれを重視するかで変わります。

 

ダクト式とダクトレス式

 

第1種熱交換換気は、さらにダクト式とダクトレス式に分けられます。

ダクト式は、換気設備本体から天井裏や床下などへダクトを通し、各部屋へ給気・排気を行う方式です。

1台の設備で家全体の空気を管理しやすい一方、ダクトを通すスペース、施工品質、点検や清掃方法などを考える必要があります。

ダクトの曲がりや長さ、太さによって空気抵抗が変わり、設計どおりの風量が出ない場合もあります。

ダクトレス式は、外壁に面した場所などへ換気設備を設置し、部屋ごと、または複数台を連動させて換気する方式です。

大がかりなダクト工事が不要ですが、設置場所や台数、運転音、各部屋の空気の流れを検討する必要があります。

ダクト式とダクトレス式のどちらが優れているかではなく、間取りや建物の大きさ、メンテナンス方法との相性で選ぶことが重要です。

 

フィルター清掃と維持管理が欠かせない

 

熱交換換気では、外から取り入れる空気に含まれるほこりや花粉などを抑えるため、フィルターが設けられています。

また、設備によっては排気側にもフィルターがあります。

フィルターが汚れると、空気が通りにくくなり、換気量が減る可能性があります。

ファンが必要な風量を確保しようとして、消費電力や運転音が増える場合もあります。

熱交換器にも汚れがたまれば、熱交換性能が低下する可能性があります。

そのため、設備選びでは、性能値だけでなく、日常的な清掃のしやすさを確認することが大切です。

フィルターをどこから外すのか。

どのくらいの頻度で掃除や交換が必要なのか。

交換用フィルターはいくらか。

住む人自身で手入れできるのか。

こうした点を事前に確認しておくことで、住み始めてからの負担をイメージしやすくなります。

 

換気システムは家全体で相談する

 

換気設備は、単体の商品比較だけで決めるものではありません。

家の断熱性能、気密性能、窓の性能、間取り、冷暖房設備、地域の気候などと深く関係しています。

たとえば、高い熱交換率を持つ設備を採用しても、建物の気密性が低ければ、設備を通らない隙間から外気が入り込みます。

その結果、計画どおりに熱交換できる空気の割合が少なくなる可能性があります。

また、給気口や排気口の位置が適切でなければ、部屋によって換気量に差が出ることもあります。

寝室の枕元に給気口があると、音や風を感じる可能性があります。

ダクトを通す場所によっては、将来の点検が難しくなることもあります。

熱交換換気を検討するときは、設備のカタログだけでなく、間取り図の上で空気の流れとメンテナンス方法を説明してもらうことが大切です。

 

住宅会社に確認したいこと

 

熱交換換気を検討する際は、住宅会社へ次のような点を確認しましょう。

  • 第1種換気を採用する理由
  • 温度交換型か全熱交換型か
  • 熱交換率はどの条件で測定された数字か
  • 設計上の給気量と排気量
  • ダクト式かダクトレス式か
  • 設備本体とダクトの設置場所
  • フィルターの清掃、交換方法
  • 1年間の電気代の目安
  • 将来の部品交換費用
  • 運転音や風量調整の方法
  • 気密測定を実施するか
  • エアコンや間取りとの相性

大切なのは、第1種換気だから高性能、第3種換気だから性能が低いと単純に判断しないことです。

家の性能や予算、維持管理まで含めて、無理なく使い続けられる方式を選びましょう。

 

まとめ

 

熱交換換気とは、室内から排出する空気が持つ熱を利用し、外から取り入れる空気の温度を室温へ近づける仕組みです。

主に、給気と排気の両方を機械で行う第1種換気で使われます。

夏は暑い外気を少し冷ましてから取り入れ、冬は冷たい外気を少し暖めてから取り入れるため、換気による冷暖房負荷をやわらげる効果が期待できます。

一方で、第1種換気は給気と排気の両方にファンを使い、熱交換器も必要になるため、設備費用、電気代、フィルター清掃、将来の部品交換まで考える必要があります。

さらに、ダクト式かダクトレス式かによって、施工方法やメンテナンス性も異なります。

熱交換換気は便利で快適性を高めやすい設備ですが、すべての住宅に同じ答えがあるわけではありません。

KIKIでは、設備の名前や性能値だけでなく、断熱・気密性能、間取り、冷暖房計画、維持管理まで含めて考えることを大切にしています。

換気方式は、建てる前にきちんと相談し、ご家族の暮らしと家全体に合うものを選ぶことが、後悔しない家づくりにつながります。