外観デザイン編!⑥太陽光パネルとデザインは両立できる?
注文住宅の打ち合わせで、「屋根の形をどうするか」「太陽光は載せた方がいいか」といったご相談を受ける機会が増えています。
外観の印象を決める大きな要素である“屋根デザイン”ですが、実は太陽光パネルとの相性や間取りとのバランスなど、設計者泣かせの課題が多くあります。
屋根デザインは家の印象を大きく左右する
屋根は家の印象を決定づける重要なデザイン要素です。
勾配や向き、軒の出方などで「和モダン」「シンプルモダン」「平屋風」などの印象ががらりと変わります。
しかし、最近の住宅設計では、屋根デザインに思うような自由度を持たせるのが難しくなってきているのが現状です。
太陽光パネルを載せると屋根形状に制限がかかる理由
もっとも大きな理由が、太陽光パネルの設置条件です。
最も効率よく発電できるのは「南面に設置すること」。これが鉄則です。
太陽光の発電効率比較(同じパネル数の場合)
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南向きの屋根:出力100%
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東・西向きの屋根:出力85%程度
この差は決して無視できません。
同じパネル数でも出力にこれだけ差が出るため、できる限り南向きの屋根にパネルを設置することが最適解となります。
その結果、設計者としては、デザインよりも“効率重視”の屋根形状を優先せざるを得ず、外観デザインの自由度がどうしても制限されてしまうのです。
「半平屋」や「子ども室だけ2階建て」の難しさ
また、最近人気のある「半平屋」や「平屋+ロフト」「子ども室だけ2階建て」といった構成も、屋根設計を複雑にさせる要因のひとつです。
上下階のボリュームが大きく異なるため、屋根の高さ・バランス・流れを美しく見せるのが非常に難しく、全体の外観バランスを整えるのに毎回頭を悩ませる部分となります。
建築のプロであっても、構成によっては設計にかなりの工夫を求められます。
太陽光パネルと外観デザインの“せめぎ合い”
太陽光発電は、ランニングコストやエネルギー自給率の観点からも基本的に「載せた方が良い」という前提で設計されることが増えています。
実際、当社でも太陽光の搭載には前向きです。
ただし、それが外観デザインとの衝突を生みやすいことも事実。
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発電効率を取るか?
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見た目の美しさを取るか?
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それとも間を取るか?
このバランスをどう取るかは、敷地条件やライフスタイル、建物の向き、屋根形状などによって大きく変わってきます。
設計者として重要だと考えているのは、「目的の優先順位を明確にすること」です。
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太陽光をどれくらい重視したいか?
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将来の光熱費はどのように考えているか?
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外観はどれだけこだわりたいか?
これらの優先順位をお客様と共有したうえで、最大限美しさと機能を両立できる設計を一緒に探っていく姿勢が大切だと考えています。